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海上築堤工法(苫小牧西港)

概要

 北海道開発局室蘭開発建設部苫小牧港湾建設事務所が平成10年度と11年度に苫小牧港西港区で施工しています。
 埋立護岸に遮蔽されている土砂処分場内において、ポンプ浚渫時に水質汚濁防止のための沈澱池が必要となり、中仕切りの目的で築堤しました。
 浚渫土砂(砂質土)にフライアッシュ(海外炭フライアッシュ)、セメント、水を混合し、味噌状にした改良土を築堤材料として使用しています。
 施工は、連続混合システムにて製造後、バックホウにて直接海中に投入して、硬化後にバックホウが載り、投入を繰り返しながら前方に進んでいく画期的な施工方法です。


特徴

 フライアッシュが水中不分離性や強度増進に効果的であること室内試験で確認して施工を実施しました。従来は雑割石などの材料を盛土して、遮水シートにより築堤を造成していますが、浚渫土砂およびフライアッシュを使用することにより30%のコスト縮減を図ることができました。(平成10年度工事で北海道開発局試算)
 本技術は、日本港湾協会技術賞、平成10年度土木学会北海道支部技術賞および平成10年度北海道開発局技術研究発表会において北海道開発局長賞を受賞しています。


海上築堤工法による苫小牧西港区土砂処分場建設工事(平成10年度)
海上築堤工法による苫小牧西港区土砂処分場建設工事(平成10年度)

施工方法

 改良土を連続混合システムにて所定量の浚渫土砂、フライアッシュ、セメントおよび海水を混練りし、ダンプトラックにて運搬後、改良土を直接バックホウにて海中に投入して、翌日、硬化した築堤の上にバックホウが載り、投入を繰り返しながら前方に進んで行くという、全国的にも初めての施工です。施工に先立ち、築堤の法尻確保と堤体の品質確保のために透水性のシートで囲む補助工法を採用しています。


図-1 施工位置図(平成10年度)
図-1 施工位置図(平成10年度)
図-2 築堤断面図
図-2 築堤断面図

図-3 施工イメージ
図-3 施工イメージ

施工規模

・フライアッシュ使用量  : 約15,000t(平成10年度と11年度合わせて)
・使用フライアッシュ   : 苫東厚真発電所2号灰
・築堤施工量       : 約39,000m3(平成10年度と11年度合わせて)
・一日平均施工量     : 730m3(平成10年度実績)

{苫東厚真3号灰(PFBC灰)も陸上部の盛土に単独で約400t使用しています}


設計条件

1.投入時に水中で分離して、水質汚濁や強度低下が発生しないこと
2.投入後の密実性(各投入毎の材料が一体化する)が得られること
3.所定の材令で強度発現すること
材齢1日 → 0.06N/mm2
材齢6日 → 0.21N/mm2

 設計基準強度は、施工時の円形すべり計算によって、材齢1日は1.0m3級バックホウ荷重、材齢6日は10tダンプトラック荷重から設定しました。


配合

配合の一例

 配合は、改良土(浚渫土砂+フライアッシュ+セメント+水)1m3当たり300kgのフライアッシュを混合し、ミニスランプ(h=15cm)試験でスランプが2.5±1.0cmの味噌状(超固練りスラリー)となるように含水比を調整して決定します。


事前試験

 フライアッシュは、粒径がほぼシルト質(5〜75μm)、粒子が球形であることから、流動性および材料分離抵抗性を増大させる特性があります。
 この特性を利用して、土砂に混合し、弱流動性になるよう加水調整すると、改良土は水中における不分離性や密実性が得られ、セメントを添加することにより目標強度を確保することができました。


図-4 F量と濁度の関係             図-5 F量と気中quの関係

 図-4は、直径15cm、高さ1.2mの透明な塩ビ管に水を満たし、1回当たり約33cm3の試料を2、4、6個投入毎に中央水深部から採水し、分光光度計によって濁度を測定したものであり、改良土中のフライアッシュ(F量)が増加するほど濁度が小さく、分離が少ないことが分かりました。図-5はこのときの試料で一軸圧縮試験を実施したもので、フライアッシュを増加するほど強度発現していることが分かります。


施工結果

 ボーリングコア観察により、海中の築堤材料が一体化していること、及び強度試験により目標強度達成を確認しました。

築堤ボーリングコア写真(平成10年度施工箇所)
築堤ボーリングコア写真(平成10年度施工箇所)
・一軸圧縮強度(材齢6日) : 0.7N/mm2(平均)
・透水係数(材齢28日)  : 10-7cm/Sオーダー(室内透水試験値)

環境影響

 周辺地域および外海のpH測定、改良土の「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令第5条第1項」による溶出試験を実施し、問題が無いことを確認しています。

図-6 築堤周辺のpH測定結果
図-6 築堤周辺のpH測定結果

参考資料

1)石炭灰を利用した超固練りスラリーの水中盛土材への適用性に関する実験的検討
(土木学会第54回年次学術講演会概要集 第5部、p30-31、平成11年9月)
2)石炭灰を用いた水中硬化体の開発
(電力土木 No.284、p9-13、平成11年11月)