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深層混合処理工法(F-CDM)

概要

 CDM工法は、軟弱地盤上に荷重強度の高い構造物を構築する場合において、原地盤土とスラリー状の固化材とを撹拌混合し、軟弱層のほぼ全厚にわたって改良地盤を造成することによって構造物を支持させる工法です。
 北海道電力(株)では、苫東厚真発電所4号機増設工事の貯炭サイロ基礎工事において、フライアッシュを利用した層混合処理工法(F-CDM)を採用しました。フライアッシュをセメントの一部代替材および粉体増量材として用いることにより改良体品質の均一化ならびに資材コストの縮減を図ることができます。


特徴

 F-CDMには次のような特徴が挙げられます。

1.ポゾラン反応による長期耐久性の向上
2.スラリーの増量による現地盤との撹拌効率向上に伴う改良体品質の均一化
3.セメントの一部代替に伴うコスト縮減

混合処理状況
混合処理状況
改良体
改良体

施工方法

 当工事箇所にはN値30以上の硬質地盤が介在するため「水吐出併用貫入+引抜きスラリー吐出」の打設方法を採用しております。
 施工フロー及び施工模式図を図-1、図-2に示します。


図-1 F-CDM工法の施工フロー
図-1 F-CDM工法の施工フロー
図-2 施工模式図
図-2 施工模式図

施工規模

(1)貯炭サイロの構造
プレストレスト鉄筋コンクリート構造7,000t/基×3基
(2)F-CDMの概要
改良方式 〜 接円ブロック方式(径1.0m×2軸、改良率78.5%)
平均改良長 20.3m  施工数量 1,275セット
改良体積 約40,700m3
(3)フライアッシュ利用量
苫東厚真発電所2号機産フライアッシュ 2,000t

設計条件

  • 1.改良体の設計基準強度Fc=1.77N/mm2(91日)
  • 2.スラリーのPロート流下時間 13秒以下

配合

 室内配合試験と現場試験施工の結果から、F-CDMの配合を次のように決定しました。

表-1 F-CDMの示方配合
表-1 F-CDMの示方配合

配合試験
(室内)

(1)使用材料
・セメント
普通ポルトランドセメント、高炉B種セメント
・フライアッシュ
自硬性およびポゾラン反応に影響を与えるCaO、SiO2、Al2O3に着目し、次の3種類を使用しました。
フライアッシュ成分表
フライアッシュ成分表
(2)試験結果
■W/(C+F)=60%におけるスラリーの流動性(Pロート流下時間)は、現場での圧送性に支障がないとされる13秒以下であり、高炉B種セメントと同等かまたはそれ以上です。(図-3参照)
■F-CDMの強度発現傾向は、フライアッシュの種類により異なります。CaOが少ないフライアッシュは、短期強度が小さいものの材齢91日で同一のセメントのみの強度と同等を示します。
一方、CaO量が多いフライアッシュは、短期強度が高く、材齢7日で同一のセメントのみの強度を上回ります。(図-4参照)
したがってF-CDMにおけるフライアッシュの効果は、次のとおりです。
・CaO量が少なく自硬性の低いFA・・・
流動性の向上や強度のバラツキ抑制を目的とした「増量材」
・CaO量が多く自硬性の高いFA・・・・
「増量材+結合材」
図-3 Pロート流下時間とFA添加率F/(C+F) 図-4 材齢と一軸圧縮強さの関係
図-3 Pロート流下時間とFA添加率F/(C+F) 図-4 材齢と一軸圧縮強さの関係

施工結果

 本施工における標準配合を次のように決定しました。

表-2 標準配合
フライアッシュ成分表

 一軸圧縮強さの平均値は6.2N/mm2を示しており、設計基準強度Fc=1.77N/mm2を十分満足しております。(図-5参照)

フライアッシュ成分表
図-5 改良土の一軸圧縮強さ

参考資料

1)フライアッシュを混合した深層混合処理工法(FCDM)の強度特性について
(土木学会第55回年次学術講習会、平成12年9月投稿中)